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Vol.2『スペクトル』

Vol.2『スペクトル』

それは偶然の産物であった。1970年代に、「スピードとスピンの増強」を目指して新たな表ソフトを模索していたTSPが、度重なる試作の中で「台形の上に円柱を重ねたツブ形状」を開発。試打してみたところ、「スピードとスピン」だけでなく、独特のナックルボールが打ち出しやすいことに気づいた。

それまでTSPは、回転系の表ソフトとしてツブ形状が台形の『スピンエース』と、円柱でツブ間隔の広い『ファイナル』の2種類を発売していた。様々な可能性を試すうちにたどり着いた「台形+円柱」の思わぬ効果により、開発陣は『スペクトル』の発売を決めた。そして、トッププレーヤーから一般レベルまで、幅広い選手に愛されるベストセラーが誕生したのであった。

スピード系表ソフトの代名詞と言われる『スペクトル』だが、注目すべきはミート打ちのしやすさだけではない。『スピンピップス』などの回転系表ソフトをのぞけば、表ソフトとして最高クラスの回転性能を持っている。さらに、相手の打球の威力を利用して鋭いナックルボールを打ち出せる、万能タイプの表ソフトなのである。

『スペクトル』は、独自の両ハンド速攻スタイルを模索した河野満が、徹底的に用具を試した末にたどり着いたラバーでもある。河野は、『バーミンガム77』という軟らかめのラケットに、スポンジを固くした特注の『スペクトル』を合わせた。その狙いは、ラケットでコントロールを確実にしたうえで、ラバーでボールを弾いたり、回転をかけたりなど幅広い球種を使って攻撃するというものだった。そして見事、1977年に世界チャンピオンという栄冠を勝ち取ったのである。

『スペクトル』の性能は中国でも認められ、「7色の変化球」と言われた多彩なバックハンド技術を操る王涛(ワン・タオ/95年世界選手権3冠)が愛用していたことでも有名だ。押したり弾いたり、左右に曲げたりという王涛の高難度のバックハンド技術を『スペクトル』は支えた。王涛も、「自分の特長はまずバックハンド。自分が使っている表ソフトラバーの特長も完全にマスターしています。用具の特長と技の特長をすべて利用して試合で戦います」と当時のインタビューで語っている(TSPトピックス1995年2月号)。それほど、王涛の『スペクトル』への信頼は厚かった。

現在の卓球界は裏ソフトラバー全盛であり、表ソフトの使用者は格段に少なくなった。その傾向は特に男子で顕著である。しかし、逆説すれば人数が少ないからこそ、表ソフトの特長が武器になる時代であるとも言える。裏ソフトにはないスピード感とナックルボールを軸にしながら、時に自ら回転を作り出す独創的な表ソフト速攻。王涛の例からもわかるように、『スペクトル』ならばそれが可能だ。

河野と王涛という二人の速攻選手は、瞬間的な打ち合いの中で変化を生み出せる『スペクトル』の独創性を愛した。進化し、複雑化を続ける卓球だが、穴のない全面的な技術力と、自分だけの特長を持っていることが世界で勝つための条件であることはずっと変わっていない。その、自分だけの特長として、現代版の独創的な速攻スタイルを『スペクトル』とともに見つけよう。時代を超えて変わらない性能を武器に、1977年の河野、1995年の王涛に続くのだ。

Vol.2『スペクトル』
Vol.2『スペクトル・スピード』
Vol.2『スペクトル・21 sponge』
バックナンバー

Vol.1『バーミンガム77』(2011/1/1 掲載)

Vol.2『スペクトル』(2012/2/28 掲載)

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プロジェクトTSP 開発秘話
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